白井克典設計事務所

Shirai Katsunori
アトリウムのある家

アトリウムのある家

DATA

基本設計:林雅子
実施設計:林・山田・中原設計同人、担当 白井克典
施工:清水建設 広島支社
所在地:広島県
主要用途:専用住宅
構造:TIS & PARTNERS
設備・電気:設備システムズ
構造・構法:鉄筋コンクリート造耐震壁付ラーメン構造
規模:地下1階 地上5階
敷地面積:252.91m2
建築面積:143.27m2
延床面積:583.77m2

建物は広島の密集した市街地にある。北側には幅員4mの道路があり、その他の3方向には、3階建て以上の建物が近接していた。76坪ほどの陽当たりの悪い敷地に、5層の階を3世代が住み分ける住宅である。周辺環境からシて、日照は5階レベル部分と屋根面からしか取り入れることができない。そこで、ガラス屋根をもつ5層分の吹き抜けたアトリウムを設け、全階への十分な日照などの住環境を確保した。
クライアントは何度か家を住み替えており多様な居住歴をもっていた。設計依頼のキーワードは旅館「俵屋」のような落ち着きがあり「サザエさんの家」のように団欒のある家であった。そのため、床材や造作材などは落ち着いた色合いをしたチークを用い、壁は漆喰仕上げを基本としている。

アトリウムにはね出した食堂。両サイドには通風やガラス拭きを可能にするための上げ下げ障子がある。ベンチに座ればアトリウムを通して全居室の気配が読み取れる。

アトリウムに面する建具のみ赤の染色をしたが、その他は着色することはせず、そのままの素材を活かした仕上げとしている。
各階はアトリウムを取り囲んだコの字型平面形をしているが、それぞれ、固有の空間個性をもって棲み分けられている。もっとも落ち着いた光が差し込む中庭に面して1階には母親、2・3階に夫婦、周辺の建物より高い位置にある4・5階には、娘夫婦+子どものスペースが確保されている。基本的に世代ごとに独立した住まいを設けているが、2階には家族全員が集まることができるスペースも確保されている。
立体的な植栽をどの場所から見ても楽しめるように、各階に、植栽スペースと一体化したブリッジを南側に設け、植栽によって南側の壁面をカバーした。そのことによって、5層吹抜けの高さに対する恐怖感も緩和されている。
パブリック性の高いスペースをアトリウムと関係させ、その周辺にプライバシーを必要とするスペースを配置したことで、アトリウムは世代間、個室間を適当な距離を保ちながら、気配をも伺い知る関係性や、家族の団欒をつくる重要な役割をもつ装置となった。そして、アトリウムに対して跳ね出す三角のガラスの箱に包まれた「茶の間」のような食堂は、家族の中心の場となることとなった。

アトリウムのある家の構造について

主体構造は鉄筋コンクリート造の耐震壁付きラーメン構造(厚肉床壁構造:Thick Wall Floor Structure)を採用した。厚肉床壁構造は鉛直方向の力が一部分に集中させず、適度な柔軟性(粘り強さ)をもつ。また、部材構成が明快で力の流れが把握しやすく柱及び梁によるデッドスペースがない。また施行性にも経済性にもすぐれている。本建物の重力及び地震力に対する抵抗メカニズムは、重力に対しては厚さ35cmの床梁(ワインディングパイプΦ225mm)の曲げ抵抗により鉛直方向の力を壁柱および壁へ伝達させる。X方向(壁柱面外方向)の地震力に対しては、厚さ35cmの壁柱および床梁により構成されるラーメン架構により、上階に働く水平方向の力を壁柱の面外せん断力として下階へ伝える。また、Y方向(壁柱の面内方向)の地震力に対しては、耐力壁の働きをする厚さ35cmの壁柱により、耐力壁の面内せん断力をして上階に働く水平方向の力を下階へ伝達させている。(今川憲英)

3階には食堂のガラス屋根の清掃のために左右の開口部がある。左手上部は寝室につながるルーフガーデン。植栽スペースを兼ねたブリッジが東西の空間をつなぐ。2階食堂より居間方向を見る。アトリウムから柔らかな最高を得ている。床のチークパーケットフロアと和楽壁が落ち着いた空間を作っている。

アトリウム見上げ。アトリウムの高さは15m。三角形にはね出したガラスの箱が食堂。

3階化粧室よりサービスバルコニーのある浴室を見る。

2階食堂を望む。