白井克典設計事務所

Shirai Katsunori
だんだんの家

だんだんの家

DATA

設計:白井克典/設計同人白井事務所
施工:木所石材店
構造:我伊野構造設計室(G.Design)
構造・構法:鉄筋コンクリート造+木造
規模:地上3階
所在地:川崎市高津区
敷地面積:169.04m2
建築面積:66.91m2
延床面積:136.78m2
撮影:大沢誠一

自宅を建てようと3年前に計画し、特徴のある土地を探していたが、縁あって、理想とする土地にめぐり合うことができた。
敷地は川崎市高津区にある東斜面で、8mの高低差がある30度の傾斜地。南北に細長の三角形の土地である。周辺は道路と鉄塔に囲まれている。南には緑一面の斜面が連続し、大樹と葛の葉が斜面を覆い尽くしている。傾斜がきつく、一見、建物を建てる敷地とは見えにくい土地ではあるが、周辺に建物が建つ可能性がなく、緑豊かで陽当たりも保証された敷地である。自邸の設計は、この土地の「地籍」に沿った家をつくることに集中することで十分だった。

1階がカーポートと入り口、2階床スラブが前面道路側にはね出し、木造の2階・3階が載っている。3階ベランダは南側開口の日照調整や3階の開口部の開け閉め、メンテナンスを可能にしている。

敷地再頂部からデッキを見下ろす。

建物は、1階部分と斜面を受ける部分のみを土留を兼ねてRCとしている。東道路からカーポート、入り口のつながりをオープンにするため、2階床スラブを東面にはね出し、その上に木造で2・3階を建てている。
1階斜面側のRC壁を利用し、陶芸のできる工房にあて、カーポートと連続する部分に、入り口、階段を配置している。2階は西斜面側に水まわりをまとめ、パブリックスペースを大きく東側に確保した。東側の壁は床スラブのはね出しでもあるので、3階の床の荷重を受けないよう、居間東側を吹き抜けにしている。そうすることで、南面は2層分の開口部を確保でき、吹き抜けを通して、上階の書斎、寝室とも繋がり、南の斜面の借景を大きく取り込むことができた。3階の寝室は南西に位置するが、南の斜面の借景から国道246号線まで見通す風景が得られ、緑と車の動きを楽しめる。西の開口部からは敷地頂上のだんだん状の斜面と畑が見えるが、西道路より低く、通行人の目線は気にならないので、開放したままで過ごせる気持ちのより空間となった。

外部は2階部分にあるでっきとつながったわずかな庭に大谷石を敷き、ヒメシャラを植え、借景とのバランスを取っている。また、敷地頂上部の平らな部分は、一日中陽当たりがよいので、畑をつくり、野菜を栽培している。北には、斜面を利用して石積みのだんだん畑を設け、お茶、みかん、いちごなどを植え、東道路から台所に直結した石段の足元にハーブや薬草なども栽培している。土地の隅々までその特徴に合わせ利用しきっている。

造作材は、外部まわりをベイヒバ、ベランダ・入り口回りをチーク、内部をベイマツと適材適所に使い分けている。その他の仕上げ材は、居間に貼られた柿渋染の手揉み和紙をはじめ、建物が完成してから、自然に表情がだんだんと変化して、落ち着きを持たせてくれるものが使われている。住まうほどに味わいの出る素材を積極的に使った。

こうして、「地籍」としての特徴を生かして斜面に素直にそっとはめこんだような家ができあがった。土地や家の特徴から「だんだんの家」と名付けたが、結果として、私はこの「斜面の力」をだんだん受けながら生活することになった。(白井克典)

食堂より台所方向を見る。左手奥のドアから石積みだんだん畑に出られる。ガラス戸棚背面は江戸からかみ貼り。

敷地は傾斜30度の斜面と3方道路、鉄塔に囲まれている。階段のある北面と斜面側の西面は閉じた構成。前面道路側の花崗石割石積みの仕上げは石屋の手持ち材を使用したもの。